実施報告:第74回 SEA-SPIN Meeting

第74回 SEA-SPIN Meeting (January 31, Monday, 2011)テーマ: 「やわらかなイノベーションの行為とソフトウェアプロセス」

主催: SEA プロセス分科会(SEA-SPIN)


2009年11月に明治大学法学部教授の阪井和男先生をお招きしましたが、今月の SEA-SPIN Meetingでは、その第二弾として、「やわらかなイノベーションの行為とソフトウェアプロセス」と題して、話をしていただきました。
当日の発表資料は、以下でご覧ください。
概要:
わたしたちは緻密な計画や制度をつくって厳格に運用することを好む傾向があります.特に日本ではこの傾向が強いといえます.実際,石橋を叩いて壊してしまうような完璧主義の日本では,プロジェクトを99%まで詰めないと実行に移さないというのが実感ではないでしょうか.
このような計画制御の代表例としてPDCAサイクルを取り上げて,歴史を振り返りつつその原理を再検討して「硬い」サイクルを「やわらかな」制御にするための試案が提示されました。さらに,この議論をソフトウェア開発プロセスに当てはめて,計画重視手法のウォーターフォールモデルや反復型開発、適応的開発手法のアジャイルソフトウェア開発との比較検討を行っていただきました。
結論:
1.PDCAに代表される改善サイクルは、6つの条件のすべてが満たされた、きわめて限定された状況においてのみ有効である。
2.不確実な環境における柔軟で即興的な対応は、アフォーダンスによる場の創造性からもたらされる。
3.問題解決における知的活動は、知識と能力からなる顕在的活動と、場による潜在的活動の相互拘束サイクルによって、即興的に進行する。
4.従来モデルのソフトウェア開発は、強制的秩序で計画通りの結果に導かれる。適応型ソフトウェア開発は、創発的秩序で結果が導かれる。適応型サイクルは、アフォーダンス→多様性→創発により、視点の収束が図られる。
質疑のポイント:
1.現在の教育は、スキルと知識に偏っている。やった結果、それによって何をアフォードするか、されるかが重要である。物理的に力を抜く教育が必要だと思う。(野口体操=コンニャク体操のように)
2.想定しない結果が出た時の対応について、強制的秩序に馴れた人は野生の感覚を失くしている。智恵を創造的に作り出すことが必要。
3.日本は社会自体が閉じている。もっと生の情報を見るべき。そうでないとガラパゴス化から脱却できない。
4.和田秀樹さんの本に依ると、日本人は、1975年以前は自分に対する不安があったが、以後は周囲に対する不安があるという。大学の講義で私語が多い時、携帯電話でどう思うかを聞くと、自分は私語をしたくないという。周囲を慮って私語をしてくる人(周囲)を斟酌して私語をしてしまう。