SEA-Forum on Feb.2011 実施報告
テーマ:ソフトウェアと無形労働(Immaterial Labor)
報告者:Forum世話人 小林 允
今回のForumを企画した動機は、私たちが日頃携わっているソフトウェアの仕事について、改めてその原点、本質を探りたいということでした。背景には、本来ソフトウェアの仕事で非常に重要であると思われる個人の独自性、創造力といったものが現在の工業的な管理のもとで埋没しているのではないか、失われているのではないか、という危惧がありました。
プログラムは以下の通りです。
1.問題提起-鈴木裕信氏によるプレゼンテーションと質疑応答
2.パネルディスカッション-パネリストによるプレゼンテーションとディスカッション
パネリスト:鈴木裕信氏、新森昭宏氏、石川雅彦氏、岸田孝一氏
3.フリーディスカッション
結果として、質疑応答、ディスカッションの時間が全く取れませんでした。
Forumとしては、問題提起のプレゼンテーション、パネリストのプレゼンテーション共に内容が豊富で濃く、参加者の皆様に無形労働(Immaterial Labor)について改めて強い関心を持っていただけたのではないかと思います。
ソフトウェアの仕事との関連については、ディスカッションの時間が無かったこともあり、参加者にとっては不満が残ったかと思います。
今回ディスカッションする時間が全く取れなかったことを受けて、3月のSEA Forumは「Immaterial Laborについて自由に議論しよう(仮題)」というテーマで企画中です。改めてご案内差し上げますが、会員の皆様の積極的なご参加をお待ちしております。
プレゼンテーションは非常に豊富な内容を含んでおり、ここでは全貌を紹介しきれません。報告者の独断でいくつかのキーワード/文章を以下に記します。
1.鈴木裕信氏:
自己紹介-プログラマー; Immaterial Labor-Informational contents of the commodity. The activity that produces the cultural content of commodity; “How to evaluate values of software systems. How such values are created. How software development should be organized to create such values.”; Free software-Freedom Software Law Center, GCC steering committee;
My Thoughts-Value of Freedom. Structure of IT Industry(No innovation is required).
鈴木裕信氏のプレゼンテーション資料は下記よりダウンロードできます。
http://twitter.com/#!/HironobuSUZUKI/status/40363605283184640
<http://twitter.com/#%21/HironobuSUZUKI/status/40363605283184640>
2.新森 昭宏氏:
Immaterial Laborについての私の解釈 ⇒ Immaterial Labor=非物質生産労働(物質を作るのではなく、情報・思想・アイディアを作りだす); Immaterial Laborが生産するもの ⇒ 情報コンテンツ(コンピュータ制御とコミュニケーションが重要)、文化コンテンツ(ファッション、嗜好、世論を形成する)。; 余暇時間と労働時間の区別が困難; 集団的知性; 「プログラミングは芸術か、技術か」; 破壊的イノベーションはいずれやってくる。
3.石川 雅彦氏:
ネットワークの“無”化について(ネットワークエンジニアの究極の目標は、利用者から見て“無”のネットワークを作ること)。「無のネットワーク」。
4.岸田 孝一氏:
差異と反復-「同じことが繰り返されることなど決してない。差異だけが繰り返される(by ジル・ドゥルーズ)」; 「人間の全ての活動には創造的な要素が含まれているということだ(ヨーゼフ・ボイスのことば); 規律と制御-この2つはMaterial Laborを考える際の基本原理だった。これまでのソフトウェア工学もその道を歩んできた。これからは、もっと自由なImmaterial Laborの考え方が必要では?; 芸術はImmaterialか?-「書かれたテキストの空間は、我々がそこを歩き回るべきものであって、決してその後ろに入りこもうとしてはいけない(by ロラン・バルト)」;
5.最後に、会場の伊藤 昌夫氏から、Maurizio Lazzarato氏の「無形労働(Immaterial Labor)」(伊藤氏試訳)を参照しつつ まとめのコメントを頂きました。ここでは内容省略します。
以上