実施報告:SEA Forum & SPIN Meeting May 2011

SEA-Forum & SPIN Meeting May.2011 実施報告

テーマ: Barry Boehm記念シンポジウム in 北京 の報告

- 岸田 孝一氏 -

報告者:Forum世話人  小林 允

Forum/Meetingプログラム

1.今月のSEA Forumは、SEA-SPIN Meetingとのジョイント開催で、4月26日-27日北京の中国科学院・軟件研究所で開催されたBarry Boehmさんの75歳を祝う記念シンポジウムに招待講演者のひとりとして参加された岸田孝一さんの報告をお聞きしました。

シンポジウムの Home Page :

http://boehmsymposium.iscas.ac.cn/

プログラム:

http://boehmsymposium.iscas.ac.cn/program.html

招待講演者のリスト:

http://boehmsymposium.iscas.ac.cn/is.html

招待講演論文は次の Web Page からダウン ロードできます:

http://www.ijsi.org/IJSI/ch/online_press.aspx

2.さらに、「単なるレポートでは面白くないので、シンポジウム終了後、そこでの討論を反省しながら北京のホテルで仕上げてきたSS2011 in 長崎向けの論文『革新的プロジェクト・マネジメントを目指して』の概要についても少しお話(問題提起)をしたい」との趣旨で岸田さんからのお話がありました。

3.岸田さんの報告、お話のあと活発な議論が行われました。

6月8日~10日のソフトウェアシンポジウム2011@長崎でWG5:「 無形労働としてのソフトウェア開発」があります。岸田さんと伊藤さん(ニルソフトウェア)がコーディネートされます。さらに様々な議論が深まることを期待しています。

Forum/Meeting概要

●岸田さんのお話

「北京でのシンポジウムに参加して考えたこと」

-Part 1 - In the Mood of Listening(記念シンポジウム報告)

・Keynote-1 ~ Keynote-10についてそれぞれ1枚のスライドでテーマと岸田さんのコメントが紹介されました。岸田さんの軽妙なコメントが面白かったです。

・ちなみに、岸田さんのプレゼンテーションは「Keynote-5 Polyphonic Aspects of Software Process」

キーフレーズ:Paul Kleeのメッセージの紹介; プロセスと構造;どのプロセスについて語るのか?;

技術移転プロセスと異文化の問題; ポリフォニーとリゾーム;

岸田さんご自身のコメントは「プレゼンの趣旨が理解されたかどうかは疑問だが、一応は受けたようです」

・シンポジムを通じての感想:

・・科学院・軟件研究所の国際活動が今世紀に入って活発化したのはなぜ? アメリカの大学もそれに呼応して動いている。それに比べて、日本の大学や研究機関の動きは弱い。

・・今回の発表の多くは、旧来のMaterial Labor Paradigmをベースとするソフトウェア工学の範囲を出ていない。その意味ではBoehmさんのメッセージ“Let’s go outside the digital box!”は、上手く伝わっていない。

-Part 2 - In the Mood of Metaphor(SS2011に向かって)

・Metaphor for New Management:

SS2011に向けてのPaperでは次の項目について考えようと思っている。

-Motivation; Polyphony; Difference(and Repetition); Rhizome; Opennes;

・中間報告として各項目ごとに非常に興味ある課題が数多く提起されました。全部は収録しきれませんので、報告者が特に気になった項目を拾っておきます。

・・Motivation:ある意味で破壊的な創造性を持っているDeveloperたちをどうコントロールしたよいか?

・・Polyphony:そしてUnfinalizability; 仕様の確定に際して、無限のパラメータのうち何をどんな理由で切り捨てたか?

・・Difference:差異だけが反復される; 同一性を経由せず、差異だけを扱おう。

・・Rhizome:樹木型・階層構造の思考フレームワークに対する違和感はどこから来るのか?;

「根茎」-地中を這う「幹」のイメージ; 連結性・異種混合性、多様性、断裂性、地図性;

リゾーム型プロセス・モデルとは?

・・Openness:閉じた組織は腐敗しやすい; 新しいアイデアはいつも城壁の外からやってくる。

●岸田さんのお話のスライドは以下からダウンロードできます。

●フリーディスカッション

岸田さんのお話に触発されて非常に活発な議論がありました。

報告者も議論の面白さに引きこまれてメモを十分に取ることができませんでした。

そんなメモからひろって未整理のまま以下に列記します。

・Immaterial LaborとDiscipline - Material LaborだからDiscipline があるのか?

・・人の育ってきた環境。

・・出来てきたもの(考え)を変えようというのは何かのImpactが無いと出来ない。いろんなきっかけ。

・Creativityというのは、非連続性を含んでいるだろう。

・・全く新しいものだけをcreativityと呼ぶのはおかしいのではないか。

より自立的な、緩やかな中での連続性。

・・ジャスミン革命は非連続。

・コストや効率を考えるのがMaterial Labor、考えないのがImmaterial Labor.

・価値:他人が出来ないことをやる。価値はお金じゃないでしょ。価値観はひとりひとり違うでしょ。

・・個性、Character。

・学生に何を伝えれば良いのか悩んでいる。学生のMotivation。

・ソフトウェアとハードウェアとしてでなく、システムとしてとらえる。

・・そんな人をどう育てる? 育てられるのか?

・・SoftwareとかProgramという認識が薄くなっているのではないか?

・中国と米国との交流:(中国で)金が出るようになった。

・環境との関わり合い。

・活動の結果として、製品でなく商品を考える。

以上